【感想】飛浩隆『象られた力』(ハヤカワ文庫)

読了。
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ある天才的な音楽家を巡る秘密に対峙する「デュオ」、情報が空間を満たした宇宙……から弾かれてしまった男の冒険を描く「呪界のほとり」、ある惑星で繰り返される"美しい夜"とその仕組み「夜と泥の」、表題作であり"かたち""ちから"がSFとして深く深く掘られている「象られた力」の4作品からなる短編集です。SF界には疎いのですが、トップランナーとして著名な飛さんの作品。
あまりにスケールが大きく、描写が深く官能的で繊細で、この感動を文字にして評するなんて私のような文弱にはちょっと手に負えない……という程に面白かったです。


人間の精神そのものや、精神活動たる文化とその表象に、まるで人格のような意志や、大きな力が、装置として埋め込まれていたら。ひとつの心身しか持たない常人では抗う事の出来ないような大きな力が働く時に、強かったり美しかったりするけれども、その描写に向き合う読者は揺さぶりにゾッと恐怖するのだなと思いました。

飛さんと言えば〈廃園の天使〉シリーズも、同様な大きな力と感覚を支配されるような面白さが素晴らしいので、その、ぜひ続きを……。(私はその前に『零號琴』を買おう