2019年に読んだ、創作文芸・同人誌を振り返って

今年もあと2時間で終わりですね。
読んで良かった創作文芸(小説同人誌)の紹介でもやろうと思ったのですが、文学フリマ東京の1回につき30冊くらい買っているので50冊くらい振り返る必要が……ごめんなさい、間に合いませんですね。。。

大きく見れば、歴史ジャンルを相変わらずメインで読んでいます。
竹林クロワッサンさんの三国志は、思想によって人物が書き分けられ、それが社会へのうねりとして後漢末の混乱が続いていくという面白い試みだと思います。

大坂文庫さんがついに長編『尾生の信』を出したのも今年でした。夏に感想を書いたのでリンクで紹介します。
【感想】大坂文庫『尾生の信』 - 続・ カッコつけるのは、もうヤメだ。ダラダラと生存報告。(仮)

いくそす。さんは「もう一人の男」上下が出ました。私的には「双子の男」を読み終えたのが今年の印象。謎解き的に想像していた部分は、薄々思った感じでした。彼の強すぎる思い、これは性愛の成就よりも自分の在り方が受け入れられるかを賭けていたのでしょうか。社会に認められないマイノリティの叫びがある時、私がどんなに友として寄り添おうとしても、真の理解を伴わない慰めの言葉では相手に響かないどころか、気遣いの分だけ相手に虚しさを重ねてしまうだけなのではないか。でも私に出来る事は何だろうか……そんな事を考えたのを思い出します。

加えてファンタジー大河と言えるようなジャンルで、井中まちさん「幻影譚」シリーズ、鹿紙路さん「野の涯ての王国」シリーズや『翼ある日輪の帝国』(これは歴史作品ですが)、三谷銀屋さんの『青闇妖影鬼談』(三途の川の目玉売りシリーズ)などの作品が目立って面白かったです。

それから普段はあまり読まないSFジャンルで、雨月物語SFアンソロジーという切り口で書かれた『雨は満ち月降り落つる夜』が素晴らしかったです。一作一作の読み心地の良さレベルが高くて、これだけの作家さんにまとめて出会えた、鉱脈を掘り当てた感がありました。笹帽子さん、murashitさんは、はてなブログもされていますね。

昨年末に長編『キリンライナ』を完結した添田健一さんは、今年は短編取りまとめの年でした。次の長編企画も期待してます、と文学フリマでお話しできて良かったです。

銅のケトル社の最初期から応援してる(ここ自慢げ)並木陽さん、今年もNHK-FM「青春ファンタジー」で脚本された作品「紺碧のアルカディア」が放送されました。実況も盛り上がったなぁ……。あの時代を題材にして、あんな希望のある終わり方が出来るなんて。いやぁ、本当に素敵でした!

またジャンルを問わず活躍されている博物館リュボーフィのまるた曜子さんが、今年は『煎茶道から遠くはなれて』というエッセイを出されて、これもまた絶賛応援中であります。「お茶を気楽に楽しもうよ」という入門ガイドであり、また現役のお茶好きにとっても、自分が飲めていない銘柄を紹介してくれる「もう最高かよ!」という冊子なんですよ。実は、あの品種にあの商品名を付けたの、私の伯父でして……的な応援も個人的にあります。それと急須は私も萬古焼で、買い替える度に萬古焼で探してしまうのです。土なのに不思議なほど軽い。湯呑については、昨年から燃えに燃えている陶器陶芸趣味があって楽しんでます。おっと、本の話からだいぶ逸れてしまった!
厳密には昨年読んだのですが医療SF『幸運な子どもたち』が、身体と精神がテーマの土台にありながら、女の子が世界と対峙して生きる話として魅力的でした。

磯崎愛さんが短編集『花樹王国』を出されました。本当に美しい小説を書かれる大好きな作家さんです。

それからlousism日谷秋三さんの総集編『egg and the world』も今年の春でしたね。「revealed」と「frightened」と「Cicadas」を並べた時に、居場所がここではないと思い続けている女の子の在り方を読者は読み続けるのですけど、唯一「revealed」には永友さんという観測者がいるのは読者にとっても一息つける感覚があって、そこが一番の違いであり、私には好みだったと……daniさん本人にもう少しお話ししたかったかな。近いことは何とか言えた気はしますけど。
【感想】Lousism『eggs and the world』「dismembered」 - 続・ カッコつけるのは、もうヤメだ。ダラダラと生存報告。(仮)

添嶋譲さんの短編作品は、今年もまた胸を突くような切れ味で、私が本当には経験していないはずの物語に懐かしさを重ねてしまいます。昭和生まれの男性だから、脳が素直に侵食されて自分の記憶のように読んでしまう。他の属性の方からの感想も聞いてみたいな。

11月の東京で買えた本は、まだ読み切れていなかったりなので、2020年に振り返るのかな……なんて思ってます。

うおっ、これだけでも何分掛けてたんだ、あと1時間10分で今年が終わってしまう!?
言及できなかった皆様ごめんなさい、多くの皆さんの作品を読めて、今年も楽しかったです! 本当に感謝!
皆様の執筆活動が、創作ライフが、来年も良いものでありますように!!