僭越ながら増田の苦しみの整理に付き合いたい

このような苦しみを、一度整理したい増田がいたので余計な事を書きたいと思います。

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私は、半自動的に提示される北方メソッドには反対です。
北方メソッドについてはこちらの北方謙三本人へのインタビュー記事に詳しいですが、成立した目的も背景も違うからです。

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言葉として衝撃力があったから後々まで語られたけれど、適当に言ったわけじゃなくて、童貞の男の子からの「女の子を好きになった。初体験をスムーズに済ますにはどうしたらいいか」という質問に真剣に答えた結果だったんですよ。

これは「結ばれる時に、スムーズに行きたい、自信を持ちたい」という悩みです。そして時代の背景もあったでしょうが、経験をしなさいという手段が回答になったのでしょう。
しかし増田の悩みは、違います。
増田の悩みの①は、いま現在性欲が叶えられない事自体の悩みであるように始まりますが、後半の絶望の下りを見てください。

しかし「いつか来る希望」だったセックスは今や「見果てぬ夢」になってしまった。自分がどれだけセックスを望んでも、それが叶うことはない。人生の救いが虚構に過ぎないと気づいてしまった俺は、次に何に縋ればいいのかわからない。最近はエロ動画を見ても、ふと「この『救い』が俺にもたらされることはないんだ」という思いが頭をよぎり、深い絶望感を覚えることがある。

いま経験できない事が悩みなのではなく、「いつか来る希望」が来ないと思ってしまい、そこから抜けられない事が悩みなのです。

②他者と深いつながりを作りたいのに作れない苦しみ

④これからも彼女ができる見込みがないように思える苦しみ
これは人生に対する絶望だ。俺はきっと一生①②③を感じながら生きていくしかないんだろう。もはやこの苦しみは一時のものではなく、永遠に続く苦しみなのだ。

繰り返しますが、他者から「望まれる」事が自分には決して訪れないと思い、そこから抜け出せない事が悩みなのですから、自分に動機がないままネットの意見に従って北方メソッドを行ったとしても、その瞬間が楽しければ楽しいほど「しかし、自分が本当に望まれる事がなく、こんなに楽しい出来事が他者は簡単に手に入るのに自分には手に入らないじゃないか」と悩むのではないでしょうか。
逆に、性風俗の体験を心から楽しめなかった場合は、そのまま「金を出して経験をしても自分が満たされることはないのだ」と思うだけでしょう。

だから私は、目的の文脈が消えたまま手段だけをメソッド的に受け取るのは、良くないと思っております。
*1


さて、ここからが増田への回答です。
と言っても、増田が「整理したい」と書いた通り、つまり相談したいとは書いていない通りに、私の方も増田の気持ちの整理に付き合う事しかできません。解消のための具体的な方法は、今のところ持っておりません。増田がどんな方で、本当はどんな長所を持っていて、どこに苦しんでいるのか、その人物全体を知らないのですから。

増田はおそらく「親」とか「家族」とか、「親類」とか「学級」とか、自分の魅力ではなく仕組みによって得られた関係だけでは満たされないと感じているのではないでしょうか。誰かが、自分の事を唯一無二のパートナーとして認めてくれる事を求めているし、それだけではなく、自分自身も誰かのパートナーとして役立ちたいと思っているのでしょう。
おそらくトラバやブコメでは、具体的な相手が見えないこと、幻想を相手にしていると言われ続けるかもしれません。でも、だって現に誰とも知り合えないし、知り合いから深く近づく方法もビジョンも見えないから、だからこそ苦しんでるんですよね?

私から増田にお勧めできるのは、「ひとまず誰かに出会えなくても、虚しい心を抱えつつも、冷静に考えればまともに一人で生きているし、楽しい瞬間もちゃんとある」と、一人の人間としてそこそこの自信だけは持ち合わして生きられる事をまずは目指しませんか。

私もまた、自分が未熟であったため大学受験も中途半端な結果に終わり夜学暮らしをしましたし、就職も……増田と同じように落ち続けて、1年間の就職浪人をしました。つまり1年半以上落ち続けて、たったの1社からしか内定を貰えなかった人間です。あえて言えば、人にだけでなく組織からも「選ばれなかった」んです。自分を選んでくれる人がいない状態は辛いですよね。「あなたがまず愛しなさい」というのは正しい意見ですが、空っぽの人間が努力でやれる事ではないと思います*2。だから、いつか誰かを助けられるように、余裕とタイミングを養いませんか。
誰かと出会った先でも、いくらでも悩み苦労はするはずです。選ばれない苦しみで、痩せたりね…。それでも、のうのうと生き永らえてしまって、自分の肉体の欲と精神の求めが少しずつ乖離して、各個撃破できる事を願います。

それから、坂本真綾だ! 坂本真綾を聴こう!
今の歳なら「ヘミソフィア」を聴こうよ。「人生の半分も僕はまだ生きてない」けど、「崖っぷちに立たされた時、苦難が僕の腕を掴」んで、「自分自身の在りかが初めて見え」るかもしれない!
もし誰か好きな人が出来たなら、苦しみながら「孤独」を聴こうよ! 「独りでいることは負けじゃないのに 満たされたくていつも きりがなくて 壁にぶつかってしまう」。また次の壁かよ!
けれど、本当に良い歌なんだ。

増田の人生に、いつか本当の幸せが訪れる事を祈ります。

*1:この手段自体の善し悪しも少し……とは思いますし、大勢の人が同時に紋切り型のメソッドでレスをする事で無責任が生まれていないかという面でも、強く思うところあるのですが、今回は増田の悩みに的を絞りたいと思います。

*2:ごく個人的には、私自身が余裕のない非モテだったし、ネットのアドバイスによると自分には愛がないのだと思っていました。ですが、それと同時にクリスチャンであったので「本来、先に相手を愛せない自分は、愛されるはずがない」という意見に対して「けれども、そんな自分ですら神は愛するという」が成り立ったので、抜け出せる事が出来ました。愛する存在はありました。個人的な体験過ぎて申し訳ないのですが、本当です…。