プレイヤーと、記す者と、読む者と

ふとしたきっかけで『スローカーブを、もう一球』をまた読んでおりました。

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)

まぁ、この話をする時点で、このエントリーの7割は船橋市*1を思い浮かべて書いているわけであります。

さて「江夏の21球」という、あまりにも有名な作品が何度読んでも面白いのです。プロ野球というゲームの中で同じ場面に立ち合いながら、お互いが違う解釈で脳内に試合を組み立て、その結果として投手と打者、ベンチ、内野手、ネット裏の解説者、それぞれに違う姿が見えていたわけです。日本シリーズ終戦、1点差で迎えた最終回というプレーの記録だけでも面白い題材を、取材者が丹念に掘り下げる事で、誰にも見えなかったディスコミュニケーションも含めて多重写しになった世界が展開されるのです。

作品はもう皆様が十分ご存じでしょうし、私が説明する意味などないので、ぜひ直接読んでもらいたいのですが……こんなに面白い作品が自分が知っている今の時代のゲームで読めないかなぁと思ってしまうのです。
それが1998年の松坂大輔でも佐々木主浩でも(どっちも「横浜」か)、イチローでも新庄でも構わないのですが。
いや、やっぱりどうしても2007年日本シリーズでの山井大介岩瀬仁紀、これを読みたいのです。

99年、04年、06年にも日本シリーズへ進んだにも関わらず、中日ドラゴンズは日本一になれなかったのです。実に53年、半世紀以上も日本一を逃しており、リーグ戦では全盛期を迎えていたにも関わらずセ・リーグで最も桁外れに日本一から遠ざかっているチームなのです。というかファンの何割が前回の日本一の頃に生まれていて、物心がついていたのやら……。
そして3勝1敗で迎えた第5戦、あの日本シリーズ史上初の山井・岩瀬継投による完全試合で日本一を決める訳なのです。
この時の山井降板について議論が続いた事は割と記憶に新しく(いや干支が一周した12年半も前だぞ)、当事者のインタビューも沢山読んだのですが……このゲームが優れた筆によって記されていないだろうか、と思うのであります。


もう1つ。表題作「スローカーブを、もう一球」、これも好きな作品なのです。
川端俊介さんたち高崎高校は、関東大会を想定外に勝ち進んでセンバツに出場する事になるのです。そこでは1回戦であっさりと負けてしまうとだけ触れられているのですが、どのくらいあっさり消えたのか大会記録を見て……驚いた。
石川県星稜高校を相手に、11-1で大負けしていたのです。そうだったのか。

いつとは書きませんが、なんと私の生まれた日の出来事でした。*2


ちなみに星野伸之が自身の投球術と来歴を語った本は『真っ向勝負のスローカーブ』でして、これは実家に置いてきました。タイトルが星野伸之の生き方と選択をそのまま表していて、私は好きです。

*1: id:cj3029412

*2:たぶん、この1行のためにわざわざ今日の日記をでっち上げただけです