読了

先週は、だいぶまとめて本を読めました。助かった。わけても一冊紹介。

問題が短くまとめられていて、とても参考になりました。種々の引用がワリとタイムリーで実感に落としやすく、岩波ブックレットの良さが活きてる気がします。
現在を生きる子どもの間で、コミュニケーションがより困難になっていく*1その背景に、「個性」という言葉に表される、生まれ持ったキャラに価値観が置かれるようになったと指摘しています。それ故、互いの領域を侵さぬように必死になる反面、自分を位置づけ、承認してくれるような関係が途切れた、関係の外の世界と断絶し、関心が向けられなくなってしまっていることを説き明かされました。
さりげなく指摘されていましたが、子どもだけでなく、現代の社会全体がこの様な傾向を持っているのは、何となく自分の実感でもわかるような気がします。上の世代はわかりませんが、少なくとも社会人に足を突っ込んだ20代では、既にそんな関係になってるかと。
才能、能力について「成長」というモデルではなく、「個性」として宿っている原石を見つけ、磨くという認識になっている、という指摘は他のテキストなどでもお馴染みですね。ひとつ気づいたのですが、逆に言えば、才能の可能性をたまたま信じていれば「個性」派になるワケですが、才能の可能性も成長の可能性も、たまたま信じられなければ、それが彼ら(≒我々)の自己肯定感の低さ、行き詰まり感へ繋がるんじゃないんでしょうか。寄って立つ土台がないのに、天井だけが頭上を押さえつけてるのですから。
ネット上のコミュニケーションについて、常々思っていた特質が、軽くですが見事におさえられています。「情報の取捨選択がきわめて容易」なのは、ご存じの通り。「ネットは色んな人がいる」という古くさいロジックが未だにまかり通りかねない空気もありますが、実際は「色んな人が『いる』、其の中で、自分と同じ方向性・属性の人とだけ、空間に縛られずつき合える」ことこそ、最大の魅力であり、それに無自覚である限り最大の諸刃の剣だと思います。素人にはおすすめできない*2
ネトゲの流行について言及されてますが、短いのに鋭い! ネトゲに於けるコミュニケーションについては、汎用適応技術研究さんのオンラインゲームがオタクに及ぼす影響(汎適所属)ラグナロクオンライン中間報告1・コミュニケーション的視点から(汎適所属)が個人的にはオススメ。
ちなみに「あるゲームのサイトでは、多いときには、三〇〇〇人以上の参加者が同時につながっているといいます」とありましたが、ROのbeta時代のIrisサーバ、同時接続者数が最低8,000人〜最高15,000人以上の世界を知っている我々にとって、たかだか3,000人の同時接続なんて、ものでもない!(苦笑
教育や内面問題に興味がなくとも、現代のコミュニケーション問題に興味があれば、繋がる部分もあろうかと思いますので、遅ればせながらオススメ。
(ただ、去年出た本だし、そういうのってタイムリー勝負のblog界隈で今更紹介するのって、ひょっとしたらマナーに反してるとかあるのかな…いや、はてなだから特に恐いしw)

*1:これは「今の子どもは、昔に比べてコミュニケーション能力が低下している」という噴き上がりから冷静に一歩引いて、むしろ、コミュニケーションの前提条件がますます困難になってきたのだと指摘

*2:牛鮭でも食ってろ