タイトルにもある通り、もう期間も過ぎてるんだけど、せっかく10個選んだので日記にしてみました。
好きな陶器とか茶道具だと、ちょっと範囲が広くて、私には追いきれないな……と思ったので、比較的に美術館等で見られる茶碗に限定しました。
また近代・現代作家さんもカバーしきれなかったので、前近代のものになります。
1 瀬戸黒茶碗「小原女」
圧倒的な存在感で見る者を驚かせます。
初めて見た時の衝撃が忘れられません。この純粋に黒くて大きくて存在感を放ち続ける物質が、茶を飲むための道具として使われるという乖離が凄まじいなと思いました。
極めて物質的なようで、存在感はあれど違和感がないのが不思議で不思議で。きっと強さと存在感の中に、単なる無秩序ではなく形作られた物としての美しさがあるのでしょう。
また後の織部黒のような歪ませた作為性よりも、スラっとした瀬戸黒の在り方の方が私には好みでした。それでいて、縦に入る箆目が丸みと直線の心地よい融合になっているのも好きです。
私の感情の動きばかりが文字になって、何の解説にもならないですね。
評論の言葉を持っていないのですが、好きなのは確かです。
2 瀬戸黒茶碗「冬の夜」
先ほどの「小原女」に続き、瀬戸黒茶碗の「冬の夜」です。
小原女よりも小振りになる筒茶碗ですが、均整の取れた立ち姿と、艶やかな漆黒の色に目を奪われました。
東京国立博物館の特別展「桃山」で出逢ったのですが、あまりの美しさに、この碗の前で立ち尽くしてしまいました。色々な角度から、時に青み掛かっても見える光の照りを眺めても綺麗でした。
まさに「冬の夜」とは相応しい銘だと思います。
3 鼠志野茶碗「山の端」
bunka.nii.ac.jp
鼠志野茶碗 銘 山の端|根津美術館
鼠志野って、薄い灰色がとても可愛らしい表現になりますね。鼠志野鶺鴒文鉢なんか、もう可愛らしくてたまらないじゃないですか。
東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 鼠志野鶺鴒文鉢(ねずみしのせきれいもんはち)
(参考リンク)
茶碗の鼠志野は珍しいようで、かならず「山の端」か「峯紅葉(みねのもみじ)」が二大アイドルみたいな感じで語られますよね。鹿島みゆきか若松みゆきみたいな。(なんだそれ
鼠志野茶碗 銘 峯紅葉 | 公益財団法人 五島美術館
(参考リンク)
そこで私は「山の端」派です。鼠色が強く、淡い感じが出ていて好きです。大きさもちょうど良い。
ちなみに「峯紅葉」はその名の通り紅葉のように見える赤い鉄釉が強い、やや大き目な作品です。
5 蕎麦茶碗「花曇」
特別展 茶の湯の銘碗「高麗茶碗」~三井記念美術館(11月30日) : ヒナちゃんのblog
陶器を好きになってからも、高麗茶碗は実に侘びが深く、自分にはなかなか良さがわからないでいます。
そんな中、素朴な中に華やかさを見てしまったのが、この「花曇」です。
いや、本来ならば順番が逆で、華やかさを曇り模様が包み込むバランスと景色を楽しむものでしょうか。
6 油滴天目(九州国立博物館所蔵)
世にはいくつか油滴天目がありますが、「桃山」展で見た、九州国立博物館が所蔵する油滴天目が好きです。
その由緒も、かの「へうげもの」古田織部が所有していたとか。なんだよ、こんな綺麗な唐物も持ってるじゃないか!
かつては見る事も叶わなかったような貴重な品を広く市民に開放する、博物館という施設を、現代の民主主義社会を、褒め称えずにはいられませんでした。
8 曜変天目「稲葉天目」
国宝! 圧倒的王者!
君台観左右帳記!!
曜変天目だからというだけでなく、建盞(けんさん)の名で呼ばれる中国福建省の窯元の作品の中でも、稲葉天目は特に高台の黒が綺麗で好き。
三菱がよく展示してくれるから、絶対に高台も見てね!
9 志野茶碗「卯花墻(うのはながき)」
国宝! 圧倒的かわいさ!
唐物じゃなくて国焼で国宝という貴重さ!
なんか後半はラインナップが「これは外しちゃいけないかなー」みたいな感じになってきてる。
いやいや、この「卯花墻」ちゃんは、国宝なのに圧倒する美というよりも、気品ある可愛らしさなんですよね。
色んな美術展で年に何回も会えたりするので、自分の中では会いに行けるアイドル的な位置づけです。
えっ、君は「橋姫」派!? そう来るかぁ……
10 織部黒茶碗「わらや」
五島美術館所蔵の茶道具って、峯紅葉も破れ袋も、そしてこの「わらや」も、見ている方に精神的負荷を掛けて来るほどに作為的な作品が多いですよね。
どれも好きなんだけど、五島慶太のパワフルさがやばいなと思います。自分は根津嘉一郎のコレクションの方が落ち着いて見られる……。
それはともかく、ポップでメリハリの付いた白黒が好きです。
白と黒は、単に1色なのではなく、逆に全世界の全ての色を仮想的に表現しているような気がします。
私たちはこの白と黒に、世界を彩るフルカラーを想像しても良いのではないでしょうか。
全然関係ないけど、「瀬戸黒茶碗 ワラヤ」がネーミングが被って、おやっと思いますよね。「わらや」の方がメジャーだけど。
あと、先日の「現代茶ノ湯スタイル展 縁-enishi 2021」で、現代作家さんによる名作リメイクをテーマにした作品が並んでいましたが、「わらや」は人気で伊藤千穂さんも沼野秀章さんも作っていました。伊藤さんは、やはり艶やかな黒が特徴的でした。沼野さんは、いつものシャープで光った作風とは一変した、素朴さを現代風に飲み込んだ感じで面白かったですね。
という事で、好きな茶碗についてあれこれ書いてみました。
解説の言葉を持っていないので、どうしても感情しか書いていないのですが……。
私の見る目も育っていないので、きっと年を経る事でラインナップも変わってくと思います。
茶碗って本当に良いものですね。