- 作者: 義江明子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/04
- メディア: 新書
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さて、私が個人的に驚いたのが、本書の中盤あたりで展開される古代人の名についての論考です。ここでは土蜘蛛*2の名からはじまり、ヒメという名称、また戸籍に現れる男女の名を、史料上から読み直すことで、本来的に男女の区別がされていなかった空間に史料・資料の編纂による区別が生まれていく姿を書き出そうとしています。私たちは、史料上に現れる人物について、特別に「メ」、「ヒメ」の名を認めた時にはじめて歴史上に女性の存在を認めようとしますが、では何故、未だ確固たる由来や意味の確定に疑問の残る「古代首長の名前」を、すべからく男性の名前であるべきだ、と考えてしまっているのでしょうか。こう、改めて問われると…。土蜘蛛に男女両性が存在することは、かろうじて残された『風土記』の中にも確かに書かれていますし、また考古学的にも、男性と全く同様の葬られ方をした女性首長の古墳だっていくつも存在している、と。しかし、何故か地方勢力の首長の名前を見ると男性と断定してしまったり、また、女性首長=呪術的・巫女(ふじょ)的存在と簡単に見なしてしまっていないか、といった指摘は、とても興味の湧くシャープな視点だと思いました。
内容自体は、あまり深くつっこみすぎず、また、どちらかといえば「新しい視点の提示」といったニュアンスで書かれておりますので、いわゆる啓蒙書といった分類になるのでしょうか。これ一冊で古代史激震みたいな断定的な書では決してありませんが、しかし、また1つ歴史*3というスパンが、実に私の想像を遙かに超える世界だと実感させてくれる、面白い本でした。
…ま、かなり、平たくぶっちゃけると*4「ったく中世人のヤツらとか、全然ワケワカンネー常識で生きてるっつうのに、古代人になると、さらに予想外な現実で生きてんのかね?」という感じに近いかも。(笑)